朝霧のファミレス


朝霧のファミレス

昔、僕はファミリーレストランでバイトをしていた。
浜名湖の近くの、
漁港の町にある24時間営業の店だ。
今の時代ではあり得ないが、
朝5時から9時までの時間は、ワンオペだった。
一人で客を出迎え、注文を取り、調理し、提供する。
何組かの客が連なって来店したら、大変だ。
しかし、この時間帯は常連さんが殆んどで、まあ何とかなった。

毎朝、早い時間に来る、建築関係のおっさんが、
ある日、
仕事中に転落事故でお亡くなりになった。
 僕と、深夜の間、一緒に働いているパートさんが教えてくれた。
小さな港町、町内の人たちは皆んな顔見知りという土地柄だ。

 次の朝、おっさんがいつも来る時刻、
来客を知らせる、センサー式のチャイムが鳴った。
入り口を見たが、誰も居ない。
背筋がゾッ〜っとしたけれど、
「いらっしゃいませ。」
いつも通りに言った。
今、来てるのが判った。霊感は弱いので姿は見えない。
怖くは無い。
おっさんは好感の持てる、素敵な人だった。
僕なんかの所にも来てくれて嬉しい。

 おっさんがいつも帰る頃、また、チャイムが鳴った。
「ありがとうございました。」と、言った後、
「さようなら」と、心を込めて言った。

次の日からはチャイムはならなかった。


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